宴の後は… 

 1カ月にわたって続いたワールドカップは、イタリアの優勝で幕を閉じました。ジダン選手の頭突き一発退場で、雰囲気ぶち壊しになってしまったのは残念でしたが。あれほど実績を残したのに、あのような形で現役を終える選手というのは、後にも先にも彼だけでしょうね。

 さてこの大会、開幕前には成功を危ぶまれることが色々とありました。直前にネオナチとみられる勢力による移民系外国人への暴力行為が相次いだ時には、「大会中にも何か起きるんじゃないか」という懸念が高まりました。肝心のドイツチームへの期待度も低くて、「もしかすると予選落ちか…」という悪魔のささやきも聞かれたほどでした。

 ところがフタを開けてみれば、大会に絡んで死者が出るような重大な事件・事故はゼロ。さらに、ドイツチームは事前の予想に反して堂々の第3位に。お陰でこの1カ月間、ドイツ国民は老若男女歌えや踊れやの大熱狂でした。サッカーなんてきっとあんまり興味ないはずのメルケルおばさま(首相)まで、ほとんど毎回スタジアムに来ていたほど、チームの活躍そのものが国家行事みたいになっておりました。

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「私たちは心の中でのワールドチャンピオン」というプラカードを掲げてドイツチームに声援を送るファン

 サポーターたちが振りかざす黒赤黄のドイツ国旗が街じゅうを埋め尽くす光景。それは、日本と同じように戦争の暗い過去を引きずり、国粋的な愛国主義に対して複雑な感情が存在するドイツでは、これまでにはなかったことなんだそうです。サポーターたちのこのような行動は、国粋的な要素を排して純粋に国に対して誇りを持つ「新しい愛国心(Neue Patriotismus)」とも形容されました。移民の増加で「人種のたこつぼ」化しつつあるこの国を何とかまとめ上げたいと目論む政治家の皆さんが、さかんにNeue Patriotismusを奨励していて印象的でした。ドイツチームの活躍はこうして政治的な役割まで帯びることになった訳ですが、その意味でこの大会はドイツという国にとっては大成功だったでしょう。

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ベルリンのファンマイルに集まったサポーターたちに御礼の顔見せ興行するドイツチーム。「ファンの皆さん、ありがとう。あなたたちは世界一のファンです!」

 さて、宴の後のドイツ。W杯で芽生えた新しい愛国心に後押しされて景気回復、国民も元気回復、といきたいところですが、残念ながらそれは甘い話のようです。来年1月からは消費税が19%にアップ。W杯期間中のどさくさ紛れて(だから余計にW杯に政治の臭いを感じてしまうんですが)、健康保険料率のアップも合意されました。負担増に怒る国民への中和剤となるような大きなイベントも当面なし。夏真っ盛りなのに、早くも寒さを感じる宴の後のドイツです。

2010年に向けて、もう一つの課題 

 日本代表、残念でしたね。予想通りという見方もあるのかもしれませんが、予選敗退という結果に終わった原因分析は専門家にお任せするとして、次回2010年大会に向けて、日本代表チームとともにもっとレベルアップして欲しいなと思うものがあります。

 それは日本のスポーツ報道。こちらで「時差なし&全試合地上波生中継」のメリットを生かしてテレビ観戦していると、日本との中継・報道スタイルの違いという点で色々と良い面を発見できます。

 まずは、意外かもしれませんが「とっても静か」なんですよ。「沈黙は悪」とばかりにしゃべり続ける日本の中継とは違って、こちらでは普通の展開時はあまりしゃべりません。せいぜい選手の名前や所属クラブ、個人データ(代表歴やゴール数など)ぐらい。じっくり観たい素人ファンとっても、自分で戦況分析できるぐらいの玄人ファンにとっても、このスタイルが合っているんでしょうね、ドイツでは。もちろんゴールシーンでは万国共通の「Go〜al !!」の雄叫びが出ますが、実況アナウンサーだけの声なのでさほど気になりません。「ねえ、伸ばす時間競ってるの?」と聞きたくなるほどやかましいあの「ゴーーーーーール!!」のような変な”伸ばし”はありませんし、ましてや解説者まで熱くなって余計にうるさくなることもなし。相手国はおろか、自国の選手の名前も満足に言えない実況アナウンサーが日本にはいますが、ドイツでなら間違いなくレッドカード(即刻退場)です。

 それから、解説者がきちんと解説してくれるのもこちらの中継の良いところ。W杯優勝時のドイツ代表メンバーというような華やかな経歴をお持ちの解説者も多く、ドイツ代表には大いなる愛着を持っているはずですが、悪いプレーは逐一指摘して名指しではっきり批判します。その代わり、好プレーは思いっきり褒める。当たり前ですが、「あるプレーがなぜ起きたのか」や「このプレーはどのようにして生まれたのか」もきちんと「説明」してくれます。日本では「こんなの、テレビ観てれば誰でも分かるよ」というようなことを言いながら、サポーターと同じように試合展開に一喜一憂して日本代表を「応援」して「解説」者を名乗っておられる方々が少なからずいますが、ドイツでならやはりこれもレッド退場ものでしょう、きっと。

 選手を育てるのは直接的には監督とコーチですが、スポーツ報道にも日本代表のレベルアップに向けた役割の一端はあると思うのです。選手を精神面で鍛え、サポーターのサッカーを見る目を養うことによって、日本のサッカー文化を成熟させるという大切な役割が。日本のスポーツジャーナリズムが「試合(や大会)の背景説明」をおろそかにして、これからも「日本代表の応援団」に終始すれば、日本代表は2010年はおろか、いつまでたっても二流、三流のままでしょう。だとすれば、とても残念なことです。

観戦のお供はやっぱり… 

 16日(金)に放送されたNHKラジオでの電話リポート。3回目のこの日は、サッカー観戦と言えばやはりこれでしょ、ということでドイツビールにまつわる小話をさせていただきました。ビール大国での大会にもかかわらず、某国の水ビールしか飲めないことにドイツ人が怒ったあの一件。そんな彼らが誇りにするドイツビールって、なんでそんなにおいしいって言われているの?ということなどなど。答えはすべて「ドイツビールおいしさの原点ーバイエルンに学ぶ地産地消ー」にありますので、こちらも観戦のお供にぜひどうぞ!

 さて、日本代表の第2戦を迎えた本日18日(日)は、ミュンヘンのファンフェスト会場にてパブリック・ビューイングで観戦。同じバイエルン州のニュルンベルクに思いを馳せながら、同地で行われた日本対クロアチアの試合に声援を送りました。もちろん観戦のお供、ビールを手にしながら

PV


 ただ、晴れたのは良かったのですが、ちょっと暑すぎでした(最高気温28度、これはドイツではかなり暑い…)。ニュルンベルクのピッチ上はおそらく40度を優に超えていたと思います。私たちもバテバテになりながら帰宅。それにしても、対戦相手のクロアチア、次の試合に登場するブラジル&オーストラリアのサポーターの皆様は、みなホントに元気です。日本人の姿もちらほら見かけましたが、代表チーム同様元気がないというか…。世界の頂点を目指すなら、選手はもちろんですが、サポーターももっとパワーアップせにゃならんのでは、と思ったのでした。

 ではどうやって、ということなんですが、サポーターは代表チームが強い弱いにかかわらずもっと応援を楽しもう、と。日の丸やら「サムライブルー」も結構なのですが、例えば日本を象徴するようなマスコットなんか作ったらどうでしょうかね。この点、私がとっても気に入っているのがオーストラリアのサポーターなら3人に1人ぐらいは持っているのではないかと思われるほど存在感のあるカンガルーくん。

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 特に、ボクシンググローブを付けた”戦闘モード”の親子カンガルーのタイプがかわいいんですよね。これ、かわいい子供が持っても、フーリガンまがいの若い兄ちゃんが持っても、なぜか憎めない。それはさておき、オーストラリアのカンガルーに当たるような日本の動物って何でしょうかね。私たちは「ニホンザル」という結論に落ち着きました。時に子憎たらしい頭の良さとすばしっこさ。日本代表のプレーにも期待したいことです。どなたか、日本サポーターのシンボルざるのロゴ&ぬいぐるみ、作ってくれないでしょうか。

Jetzt geht's los! さあ、始まりだ!! 

 4年に一度のサッカーの祭典、ワールドカップがいよいよミュンヘンで開幕!4年前、自分がこの場所に住むことになるとは、夢にも思わず…。

 本日のミュンヘンのお天気は晴れ。昨日あたりまで2週間以上例年にない寒さが続きましたが、お天気のほうも開幕に間に合いました。試合開始前に買い物のために外に出てみると、いつもは何もない向かいの家の窓にはドイツ国旗が。

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 近所の酒屋に行くと、試合観戦に備えてビールを買い込もうというそわそわした感じの人たちで結構な混雑。みんな考えることは一緒なんですね。スタジアムから離れたこんな住宅街の中でも、世紀のお祭りの開幕が近いことが感じられたのでした。

 サラダにしようと買って来たレタスにはこんな包みが。

salat


 サッカーボールに見立てているの、分かります(笑)?この時期、日本でなら「ワールドカップ限定」をうたった商品がちまたに溢れているはずですが、こちらではそれほど目につきません(ないことはないけど)。商売気がないんですね、あんまり。だから、こんなレタスの包みでもなんだか珍しくて、思わず買ってしまいました。

 試合開始前の式典は、南ドイツ・バイエルンの郷土色いっぱいの演出でした(ちょっと気恥ずかしいまでに)。開幕試合のほうは、開催国ドイツがコスタリカに4対2で勝利。まずは幸先の良いスタートを切りました。明日からは連日、テレビで観戦三昧!これから約1カ月、ビールの量が増えそうです。

ワールドカップ中のお買い物はごゆっくりと 

 本日、NHKラジオの夜のニュース番組「NHKジャーナル」(午後10時から約1時間)の「ワールド・アイ」というコーナーで、ワールドカップ期間限定でドイツの小売店が24時間営業もできるようになるという話題を電話リポートしました。聞いていただいた方、メッセージをお寄せいただいた方、どうもありがとうございました!

リポートでは、
・小売店の閉店時間を規定した閉店法という法律があるために、ドイツでは平日は午後8時以降、日曜日は終日お店が閉まってしまうこと
・これがいかに市民や小売店にとって不満の種になっているのかということ
・でもこれではさすがに商売の機会を逃すので、ワールドカップ期間中は試合会場の都市とその周辺では、平日は24時間営業もできるよう法律が緩和される
・営業時間延長が小売店にもお客にも好評で成功したら、ドイツでも平日の長時間営業、はたまた日曜営業を求める動きに拍車がかかるだろうー
といった内容をお話しました。

kaufhof

お店もワールドカップムード盛り上げに一役

 種明かしをするようで恐縮なのですが、実はこの番組は事前収録もの。結構色々しゃべったのですが、時間の都合上かなりカットされてました。なので、本日はカットされた部分とからめて3つだけ書いておきたいと思います。

 1、本当に不満?
 買い物好きの人や少しでも儲けたい小売業の人にとってみれば、それはそれは不満でしょう。でも、閉店法のお陰で日曜日は強制的にお金を使わなくなくなるので、家でのんびり過ごしたり、サンドイッチでも簡単につくってビアガーデンに行ったり(レストランは開いているところが多い)、あまりお金をかけずに楽しめるのもいいものですよ。日曜日に新宿あたりで終日ショッピングして疲れ果てて帰った、なんて経験ありませんか?日曜休業は経済にとっては宜しくないことですけど、私たちの肉体と精神衛生上、それに環境のことを考えればオススメさえしてしまいたくなることです。

 2、W杯中はお店はすべて24時間営業?
 いえいえ、あくまでやりたければどうぞというだけの話です。例えば、私の住むミュンヘンの中心部にある大手デパート(写真)は、普段は平日午後8時で閉店ですが、午後10時まで開けます。日曜日も、ミュンヘンで試合が行われる6月18日に限って午後から営業します。普段よりはゆっくりショッピングを楽しめますが、不夜城のような状態を想像してドイツに観戦に来られると拍子抜けすると思います。夜中にホテルでビールの禁断症状が出ても、コンビニはありませんよ。そんな時は、駅構内やガソリンスタンドの売店へ。ただし、お値段は全体的にかなり割高です。

 3、W杯をきっかけにドイツでも営業時間長くなるんじゃない?
 景気浮揚を狙う経済界や州政府はやりたくて仕方ありません。W杯期間限定の営業時間延長が好評だったら「それ見たことか」となるでしょうね。ただ、ドイツでは来年から日本の消費税に当たる付加価値税が引き上げられて(16%から19%に)、将来不安を抱える国民は消費を手控えるはずなので、いくら営業時間を延長しても景気への効果は限定的なのではないでしょうか。この国の人々の倹約ぶりは相当なもので(日本人なんてまだまだ甘い甘い)、せっかく営業時間を延ばしても店内はがら〜ん、なんていうことにもなりかねないのではないかと思うのですが…。

 さて、電話リポートという初めての経験。収録とはいえ、やっぱりそれなりに緊張しますね(ちょっと早口だったなと反省 )。自分は活字の人間なんだと改めて実感。でもそうは言っていられないので、次回は反省点を生かしてバージョンアップしたいと思います。次回はワールドカップ開幕2日前の6月7日(水)の同じ時間帯でリポートする予定です。